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電脳コラム 2

誰も言わないパソコンの置き方

1998年10月


『世捨て人の庵』

 世間のユーザーはなぜパソコンのディスプレイを机の上に置くのだろうか。ボクには理解できない所業である。「パソコン七不思議」の一つに挙げたいくらいである。

 うちはパソコンのディスプレイもテレビも床置きである。そのきっかけはこうだ。15年ぐらい前だろうか、大型テレビが流行り始めた頃、ナショナルのテレビ(32インチぐらいだったか)で、床置きで画面が斜め上に傾いたタイプをカタログで見かけたことがある。ちょうどiMacを巨大にしたようなものを想像してほしい。フロアタイプのテレビである。「テレビは置き台の上に置くもの」という常識を破り、床に直に置いて見ることを前提にデザインされた(おそらく初めての?)テレビだった。

 残念なことに、ボクの知る限り床置きテレビは後にも先にもこの1機種だけで、以後二度と見ることはなかった。淘汰されてしまったのである。

 しかしボクはこの合理的な発想に打たれた。「テレビは目線の高さに置いて見るもの」という常識にとらわれていたのである。ボクとしたことがうかつだった。

 これ以降、うちのテレビも床に直置きにすることにした。画面を斜め上に傾ける工夫が要るのだが、テレビの下に適当な本などを挟み、視聴位置に座った時に画面がちょうど顔に向くように角度をつけるのである。

 モノを斜め上から見下ろすというのは自然な見方である。人は力を抜くと目線が自然に下がるものだ。その先に画面があれば長時間見ても疲れない。目線を長時間水平に保つというのは不自然であり、目が乾く“ドライアイ”の原因にもなる。斜め下を見る場合はまぶたの開く確度が小さいので目の乾きも少ない。

 読書の時、本を垂直に立てて読む人はいないだろう。自然に斜めに傾けて読んでいる。ディスプレイとて同じこと。

コタツとディスプレイの関係
ディスプレイの置き方(11KB)

 ボクのパソコンの置き方は写真の通りだ。パソコンを買う前からディスプレイは床置きにすることしか考えていなかった。パソコンはVAIOのタワー型。ディスプレイは17型だが、両サイドにスピーカが組み込んであるので他の17型に比べて特にボディサイズが大きい。こんなものを机(コタツテーブル)の上に置いたら目の前に壁が立ちはだかったようになってしまう。

 ディスプレと目の距離は1メートルもあるので、至近距離で見るのとは違い、目がとても楽だ。近眼予防に抜群の効果がある。1日に何時間もパソコンを使っても、目の奥が痛んだり遠くがぼやけて見えるということがない。これだけ離れていれば、電磁波の影響も無視できるだろう。

 1メートルも離れていれば、ずいぶん文字が小さく感じられて見にくいかもしれない。ある程度は慣れで解決する問題だが、気になる人は、解像度はそのままに、フォントの大きさを変えてみるとよい。Windows95の場合、「画面のプロパティ」の「デザインタブ」および「ディスプレイの詳細」でフォントサイズが変えられる。

 ディスプレイを床置きにすると、何より机の上が広々と使えるのがうれしい。コタツテーブルの上には、パソコン関係ではキーボードとマウス、アームレストしか乗っていない。

 「机が狭いのでノートパソコンを買った」という人は多いだろうが、うちのタワー型パソコンは下手なノートパソコンより机上の占有面積が小さい! ブラウン管ディスプレイの大きく鮮明な画像とノートパソコンなみのスペースファクター、両者のいいとこ取りである。

 マニュアルを広げながらキーボードを操作するのも容易だ。普段パソコンを使わないときはミニキーボードを前方に寄せておけるので、テーブルの上はいつも広々としている。本来の目的である書き物や読書にも使っているし、ここで食事もする。机上には鉛筆立て、テレビやビデオのリモコン、コーヒーカップ、フロッピィディスクのケース、電気スタンドといったものを置いているが、まだスペースに余裕がある。

 雑誌などで読者のパソコン写真を見ると驚かされる。ただでさえ狭い机の上にディスプレイと本体を置き、ダルマさんのにらめっこのごとく画面と真正面でにらみ合っている。電磁波浴びまくりである。猫の額ほどの隙間にかろうじてキーボードやマウスを乗せている。ノートや紙を広げて書き物をするスペースはまったくない。よくあんな状態で使えるものだと感心する。

 もっとも立ち机の場合、ディスプレイを斜めに置くにはかなりの工夫が必要だから無理もないのだが。それでも工夫する価値は絶対にある。そういう意味ではディスプレイを斜め置きできないパソコン専用机は失格である。

 一般に雑誌などによると、パソコン選びは「場所に余裕があるならタワー型、場所が狭いならデスクトップ型」といった説明がされているようだが、これはまったく逆だ。デスクトップ型は本体が横置きなので非常に机上スペースを取る。ボクがデスクトップ型を使うなら、パソコン本体をオーディオラックなどに放り込むだろう。その点、本体を立てたタワー型の方が遥かに占有面積は小さいし、床置きにすることもできる。そもそも本体を机の上に置かなくてすむところにタワー型のメリットがあるのだ。

 デスクトップ型は「よほど机が広い人」向きである。畳一枚分の広さが必要だ。机が狭いのでパソコン本体を乗せたくないという人には絶対にタワー型をお勧めする。

 ディスプレイもテレビも一度見下ろしてみるとよい。目が楽なのが実感できるだろう。


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