日本人が長時間労働なのは、残業手当の割増し率が25%と、アメリカの50%に比べてはるかに低く、会社は人をたくさん雇うより少ない人員を長時間働かせたほうがコスト的に見合うからだ、という話を読んだことがある。
割増し率50%である。かの国では個人の時間にその価値に見合った値段がついているから、容易に時間を奪われないわけだ。
最近話題の日本版ホワイトカラー・エグゼンプション。残業代をゼロにすれば残業が減るだろうという議論は、上とは正反対である。だからうまくいかない、とも言いきれないんだな。
生活残業という言葉があるくらいで、必要がないのに残業するサラリーマンはボクのエンジニア時代にも大勢いた。日中だらだら仕事をして、夜中まで残業する。そういうムダな残業が減るのはたしかだろう。
残業代をなくすことで仕事の能率アップも見込める。なにしろ日本のホワイトカラーの生産性の低さは先進国で際立っているのだから。
一方で、サービス残業が増えるという指摘もある。しかし、自ら進んでサービス残業したがる人がいるのも事実。組合の協定で残業時間を制限しても、それ以上に働きたがる人はめずらしくない。
サービスであれ手当つきであれ、残業時間数は忠誠心、愛社精神のバロメータでもあるのだ。
かたや残業代を増やせば残業が減るという論理、かたや残業代をなくせば残業が減るという論理。どっちが本当なのか。どっちも本当だろう。
残業手当5割増しで残業が減るというのは、本人の意に反して残業させられているという前提に立った話。残業代をゼロにすれば残業が減るというのは本人が望んで残業していることが前提になっているわけだ。
ボクの見たところ、金などいらないから時間がほしいという人はきわめて少数派。残業が減るのはいいけど収入が減るのはこまるというのが大方だろう。時間などいらないから残業でバリバリ稼ぎたいという人も多いはず。その他に、早く帰ったんじゃ出世できないモーレツ戦士、早く帰っても家庭がつまらないパパ・・・などなど、いろいろな思惑がからんでくる。一口にサラリーマンといっても一枚岩ではないのである。
とにかく労働に関しては世界の常識が通用しないのが日本。年休を完全消化しない人がいたり、不況のさなかでも過労死が増えてしまうという摩訶不思議な国である。
ホワイトカラー・エグゼンプションで残業が減るのか増えるのか。なにしろ世界に二つとない異常な国のこと、常識人のボクにはわからない。
ま、知ったこっちゃないけどね。