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 レタッチ研究室 


挿し絵(7KB)

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 写真をレタッチ(補正)するというとなんだかうしろめたい気がする。余計な加工を加えず写ったものをそのまま最終結果とする方が潔(いさぎよ)いではないか。ボク自身、未だにこの偏見を完全にぬぐい去ることができない。

 しかし、好むと好まざるとに関わらず、パソコンで画像を扱う以上、レタッチは様々な場面で必要になる。印刷物のスキャン、フィルムのスキャン、ホームページ用の画像加工、デジカメ写真のプリント用加工。フィルムをスキャンするときなど、レタッチできないとまともな画像が得られない。

 写真画像は少し化粧してやることで画質が見違えるようによくなる。レタッチとは新しい写真を創作するのではなく、「撮影の意図に沿って撮影テクニックを補い、カメラやスキャナの欠点を補い、写真の持っている情報を十分に引き出すこと」と考えてはどうか。ものは言いようだ。この冴えない写真のどこにこれだけの情報量が入っていたのかと驚くこと数知れず。この魔法は一度ハマると虜になる。

 レタッチにはなぜか教科書的、模範的なやり方というのがないようだ。インターネットでレタッチ術を調べると、人によりバラバラ、各人が自己流のやり方を勝手に公開している状況。これはけしからん。ボクも我流のノウハウを公開したくなった。かくして生まれたのがこのページ。ボク自身、レタッチの専門家ではないので(マニアですらない)、実験と試行錯誤をしながら応用の利きそうなノウハウを公開していく。これを参考にして自分流のやり方を工夫してほしい。

ここで紹介するレタッチは主に写真をホームページやモニタ上で鑑賞することを前提にしている。プリントするためのノウハウとは一部異なる部分がある。





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入門者の簡易レタッチ術



 何もわからんという人のための講座。わかってる人は読む必要なし。

 インターネットでホームページを見ていると、ぼやけた写真を掲載しているサイトが結構ある。ほんのちょっと手を加えてやればぐっとシャープで鮮明な写真になるのだが、そのやり方を知らないのだろう。かく言うボクも以前冴えない写真を載せていたのでよくわかる。

 書店に並ぶレタッチ関係の本を見ると、「Photoshop 7.0の使い方」、「Paint Shop Proの使い方」、「Photoshop Elementsの使い方」……とソフトに特化したものがほとんど。これらはレタッチソフトの操作法を解説したものであり、レタッチの方法論を解説した本はほとんど見当たらない。

 ここでは個々のソフトの使い方には触れない。市販本には書いてないどのソフトにも共通するレタッチの手順を説明する。基本中の基本、必要最低限の機能だけを使った、誰でもできる簡易レタッチ術である。この基本を知れば、全国のホームページの写真はみなキレイで鮮明な画像になること請け合いである。

必要なソフトは?

 レタッチとは写真を補正したり合成したりすること。これをやるにはグラフィックソフト(画像処理ソフト)が必要。画像処理ソフトにはいくつかのタイプがある。写真加工を得意とするレタッチソフト、お絵描きが得意なペイントソフト、イラストが得意なドローソフトがあるが、区分はそれほど明確ではない(その他に立体画像を扱う3Dグラフィックソフトというのもある)。多くの画像処理ソフトはレタッチ機能を備えているので、普通は画像処理ソフトが1本あれば間に合う。

 ここで紹介する簡易レタッチに必要なものは任意のグラフィックソフト。手持ちのソフト、パソコンやスキャナにバンドルされたソフト、あるいはフリーウエアでもたいてい間に合う。

レタッチの手順は?

 明るさも彩度も調整できる、シャープにもできる、縮小もできる、でも何をどの順番でやればいいの? AZMA流簡易レタッチの基本は以下の4ステップから成る。

(1) 回転、トリミング
(2) 明るさ・コントラスト、彩度の補正
(3) 縮小/拡大する
(4) シャープフィルタをかける

 レタッチは手順が結構大切。なるべくこの順番を守ってほしい。順不同に補正すると効果が減ったり画質が劣化することもある。

1. レタッチ前のサンプル画像
14KB

では実験開始

 右のサンプル画像を例に、ホームページ用の小さな画像に加工してみよう。この画像はデジカメで撮りっぱなしの写真(1600×1200pix)を縮小し、JPEG変換したもの。

 中央の屋根の照り返しに引っぱられて露出アンダーぎみ。シャドー部がつぶれてはっきりしない。地平線を見るとわかるようにフレーミングが右に傾いているし、構図にムダが多い。画質はシャープ感、クッキリ感がなく、ちょっと“眠たい”。よく晴れているのに色が暗く沈んでいる。冴えない写真である。誰だ、こんなヘタクソな写真を撮ったのは。…ボクか。

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(1) 回転、トリミング
2. 回転、トリミング処理
15KB

 まず、フレーミングが傾いている場合、「回転」をかけて補正する(廉価ソフトにはこの機能がないこともある)。傾いていなければ必要ない(回転は画質劣化を伴う)。サンプルでは地平線が水平になるよう半時計回りに傾けた。

 次に、「トリミング」(不要部分のカット)で構図を修正し、ムダな部分をカットする。構図に問題がなければ必要ない(回転をかけた場合は四隅に余白ができるので必ずトリミングが必要)。サンプルでは黄線の外側をカットした。

サンプル画像はすべて表示サイズを統一してあるので、トリミング後も同じ大きさで表示する。

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(2) 明るさ・コントラスト、彩度の補正
3. 明るさのみ上げていくと↓
13KB
4. 明るさとコントラストを同時に補正↓
14KB 明るさ・コントラストのダイアログ 5KB
5. 彩度を上げる↓
15KB

 「明るさ」と「コントラスト」はたいていペアになっているので同時に調整するのが普通。「明るさ・コントラスト」と「彩度」、どちらを先に調整しても特に問題はない(結果は異なるはずだが)。

 「明るさ」はすべての部分を均等に明るく、または暗くする。露出に問題がなければ必要ない。

 「コントラスト」は明るい部分をより明るく、暗い部分をより暗くする、明暗にメリハリをつけるもの。露出に問題がなくてもコントラストを強調して画質を鮮明な印象にすることができる。

 露出アンダーを補正するため「明るさ」をどんどん上げていくと、画像3.のように暗い部分まで白けて、全体として黒に締まりのない画像になってしまう。これを防ぐには暗部をそのままにしてそれ以外の部分だけ明るくする機能が必要。これを実現するにはヒストグラムによるレベル補正やトーンカーブといった機能が必要で、普及価格帯のソフトには備わっていない場合が多い。使い方にもそれなりのテクニックが必要で、入門編の範囲を超えてしまう。

 そこで妥協策として「コントラスト」を併用。画像をよく見ながら「明るさ」と「コントラスト」を微調整して黒を締めるように調整する。ただし所詮どうあがいても完璧な補正はムリ。目安としては、「明るさ」を変えたらその半分ぐらい「コントラスト」を上げてやるとよい。これでたいていの写真は無難なレベルに仕上がる。

 例では「明るさ」を+22に抑えておき、「コントラスト」を+10にしてみた(画像4.)。これで暗い部分が十分に黒くなり、写真が締まって見える。一番黒い部分をできるだけ真っ黒にすることはレタッチの大切なポイントだ。

 「彩度」は色を鮮やかにする機能。色彩が原色寄りになりハデに見える(画像5.)。使わなくてもかまわないが、使った方が発色がキレイになる。ただしやり過ぎるとケバイ感じになるのは女性の化粧と同じ。ほどほどにしておく。

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(3) 縮小/拡大する

 デジカメで撮った画像やスキャンした画像はホームページに使ったりディスプレイで鑑賞するには大き過ぎるので、たいていは縮小することになる。画像の縦横の比率(アスペクト比)を一定にしたまま適切なサイズにする。実にカンタンな話なのだが、ここで操作につまずく初心者がいるかもしれない。縮小/拡大メニューの呼び方がソフトによりまちまちで、「画像解像度」などと表示しているからだ。画像の大きさを変えることがなぜ解像度を変えることになるのか、詳細は枠内を参照。

縮小/拡大と画像解像度の関係

 ここで言う画像の縮小/拡大とはモニタ上で見える大きさを変えることである。モニタ解像度(ディスプレイ1インチに何ドット表示できるか)は意図して変更しない限り一定だから、モニタ上で画像を小さくするということは画像を構成するピクセルを間引くことである。間引く前の画像と間引いた画像を同じ大きさの写真としてプリントすれば、後者の写真は解像度が落ちたことになる。

 そういう理由から画像の縮小/拡大のことを「画像解像度(の変更)」と表示するソフトが多い。ソフトによっては「写真サイズ」、「リサイズ/リサンプリング」などと表示している場合もある。

 その他に「画像サイズ」という表示がある。これは縮小/拡大ではなく、画像を指定したサイズに切り取り、余った部分を切り落とす、つまりトリミングのこと。非常に紛らわしくて責任者出てこいと言いたくなる。以上を整理するとこうなる。

・縮小/拡大
→ 画像解像度、写真サイズ、リサイズ/リサンプリング…
・トリミング
→ 画像サイズ…
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(4) シャープフィルタをかける
6. 右がシャープフィルタ使用後
16KB

 回転や縮小など演算を伴う画像処理を施すと画像の輪郭が甘くなるので、すべての補正が終わってからかならず最後に、忘れずにシャープフィルタをかける、これがレタッチの大切なポイント。

 ソフトにより呼び方が異なり、シャープボタン、シャープフィルタ、アンシャープフィルタ(シャープの強さなどを調節できる)などと呼ばれる。

 被写体の明暗を際立たせ、輪郭や細部の描写をシャープにし、解像度が上がったように見せるという夢のような機能。好みにより適切な量をかけること。やり過ぎると輪郭の荒れが目立ち、デジタル臭さが出てくる。

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 最後に目的の画像形式(JPEG、GIF、BMPなど)に変換して完了。でき上がったサンプル画像を元画像と並べてみたのが下の写真。どうだろう、目の覚めるような画質になったではないか。発色が鮮やか、細部の解像度が上がり、鮮明でシャープに見える。なんだか写真の腕が上がったように勘違いさせてくれるのがウレシイ。

1. 元画像
7. レタッチ後
14KB 19KB

レタッチソフトは主にAdobe PhotoDeluxe V1.0を使用。「明るさ・コントラスト」ダイアログはAdobe Photoshop 5.0 LEのもの。
[01.12.02]
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