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電脳コラム 10

タイマーのコンセプトがなってない

1998年10月


『世捨て人の庵』

 半年以上に渡ってボクのパソコンのデスクトップに常駐してきた時計ソフト『ArtClock』をアンインストールした。このソフトは時計としては多機能なタイプで、時計の形や文字盤の色が細かくカスタマイズできる上、タイマー、アラーム、文字盤の背景画差し替え、壁紙の入れ換え、エクスプローラのダブルウインドウ表示などの機能があった。それだけにサイズが約500KBと少々大きく、常駐するにはややメモリを食う。このたびメモリ節約のため常駐ソフトの見直しをした結果、退散願うことにしたのである。

 代わりに採用したのが『ZWATCH』という時計ソフト。これは邪魔にならないサイズと最小限の機能を持ったシンプルさがウリで、文字板の直径がわずか12mm、サイズはわずか62KBで、『ArtClock』の8分の1だ。文字盤をデスクトップと同じ色、つまり透明に設定し、常に手前に表示、時計枠を取り去り、針と目盛りしか見えないシンプルな形で置いている。

本物のタイマー(8KB)

 さて本題だが、『ArtClock』をアンインストールしたので、別にタイマーソフトを導入することになった。タイマーは、実は写真のような本物のタイマーを使っていた(キッチンタイマーというのかな)。が、パソコンの操作中に使うにはやはりパソコンソフトのタイマーを使う方がスマートで電池も食わないと考えた。

 オンラインソフトのサイト『Vector Software PACK』から時計関係のソフトをチェック。なるべくファイルサイズが小さく(100KB以下)、機能がシンプルなもの、という基準で、20個ほど選んでダウンロードした。

 解凍し、Readmeファイルを片っ端から読んで試用。しかし結局どれも気に入らず、すべてボツになった。

 ここでタイマーとアラームの違いについて一応おさらいしておこう。一般にタイマーとは、“時間”を指定すると、その時間が経過した後に、たとえばブザーがなる、という仕掛けだ。指定するのは「45分」というような“時間”である。これに対し、アラームとは、指定した“時刻”にブザーが鳴る、といった仕掛けを指す。指定するのは「3時25分」といった“時刻”である。…とボクは解釈していたが、まちがっているかもしれない。

 というのも、この解釈がちがっているソフトがあったからだ。タイマーだというので、試しに「分」の指定欄に1を指定してみたが、1分たっても一向に音が鳴らない。よく調べてみるとそのソフトはタイマーではなくアラームであり、指定欄には時間ではなく時刻を指定するというものだった。

 こういう日本語の解釈の問題はともかくとして、それ以外でどうにも納得のいかない点があった。タイマーソフトがなぜ全部ボツになったか。率直に言うと、どれもコンセプトがなっていないのである。

 ボクはパソコン操作や調べものなどを少しでも効率よくやるため、タイマーをたとえば15分にセットし、一つの作業を短い時間で区切るよう心がけている。

 タイマーを使う上で大切なことは、即座にタイマーがかけられることだ。この小さなタイマー(上写真)の操作性を見てほしい。たとえば15分のタイマーをかけるには次のような手順になる。

(1)数字ボタン1、5を押す。
(2)START/STOPボタンを押す。

 操作はたったこれだけだ! しかも前回15分をセットしていれば、改めて時間をセットする必要はなく、いきなり(2)のSTART/STOPボタンを押すだけだ。文字通りボタン一発スタートだ。

 それに引き換え、タイマーソフトたちはどうだ。例として典型的な“悪い”操作性の例を再現してみよう。15分のタイマーをかけるにはこういった操作になる。

(1)タイマーソフトを起動する(たとえばショートカットアイコンで)
(2)タスクバーにできたアイコンをクリック(常駐タイプなので)
(3)メニューをクリック(機能を選択するため)
(4)メニューから「タイマー」を選ぶ(タイマー以外の機能もあるので)
(5)時間設定画面の「分」の欄に数字15を入力
(6)OKボタンをクリック(やっとタイマーがスタートだ)
(7)ウィンドウが邪魔なので最小化ボタンをクリック

 たかが1回のタイマーセットにこんなに手間がかかるのである。常駐させたとしても手順(1)が減るだけだ。なんでこんな操作性にしてしまうかなぁ。フリーソフトをけなしてもしょうがないが…。

 他のソフトも大同小異で、「ボタン一発でスタート」という利便性からはほど遠い代物ばかりで、とても採用する気にはなれなかった。

 タイマー以外の機能も持っている場合、ボタン押下が増えるのは仕方がないとしても、デフォルトで「常にボタン一発でタイマー機能が働く」というふうにできるはずだ。

 「ソフトを起動してからスタートボタンを押す」というコンセプトではもうすでにキッチンタイマーに負けているのである。ホットキーでタイマーソフトを起動した途端に、即デフォルト時間でカウントダウンを始める、というようにしてほしいものだ。時間は変更したい場合のみ入力すればよい。

 そして、指定した時間が経過したら、音を鳴らした後、自動的にソフトを終了すること。これは常識と考えてほしい。

 タイマーをソフトで実現するからには、本物のタイマーより便利にならなければ意味がないと思うのだが、これではまったく手間が増えるだけでなんのメリットもない。

 プログラムをどういう操作性にするかは、プログラミング技術の問題ではなくコンセプトの問題である。単機能のソフトほど操作性を問われる。クリップボード履歴、カレンダー、時計…こういった小物ソフトは“操作性がすべて”なのだ。もっと操作性を練り上げてほしいものだ。余分な操作をとことん切り詰めていった究極の操作性、それがボクの持っているキッチンタイマーだといえる。

 半日以上もつぶしてタイマーソフト選びをしたが、まったくの徒労に終わった。結局ソフトを使うのはやめにし、従来通り実物のタイマーを使い続けることにした。あ〜疲れた。

 時間を節約するためのタイマー探しのはずが、かえって時間を浪費してしまった。ボク自身も時間に対するコンセプトがなってなかったと反省。


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