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電脳コラム 15

究極の省スペースキーボード

2003年8月


『世捨て人の庵』

● デカすぎる標準キーボード

 以前紹介したミニキーボード(MITSUMI)、その後、コーヒーをこぼして接触不良を起こし、引退。仕方なくVAIO付属の標準サイズのキーボードに逆戻り。ここ2年ほどはこれを使っていた。

 先月、このキーボードも接触不良を起こしていくつかの文字が入力できなくなった。原因は接点の寿命か、飲料をこぼしたせいか。多分後者だろう。なにしろ今年だけで3回もコーヒーをこぼしているからだ。

 そんなわけで新しいキーボードを買うことになった。選択の条件。

  (1) 小型である(机上スペース節約のため)
  (2) キーピッチが小さい(高速入力のため) (*1)
  (3) Spaceキーが短い(親指シフトで使うため) (*2)
  (4) USB接続でない(Windows95で使うため)

(*1) Spaceキーが長いと、右手親指がSpaceキーに乗ってしまうので親指シフト化できない。詳細は以前のコラム9「標準キーボードで親指シフトしよう」を参照。
(*2) キーピッチと打鍵速度については以前のコラム11「ミニキーボードで高速入力を狙え」を参照。

 条件(3)と(4)は必須。今回はさらに(1)にこだわった。標準キーボードのムダなデカさにはもううんざりである。

 標準キーボードはアメリカ人が広いデスクで使うために作ったサイズ。日本の住宅事情には合わない。

 幅が広すぎるのでマウスを動かすとキーボードに当たったりする。横にコーヒーを置くスペースがない。仕方なくキーボードの前に置く。だからコーヒーをこぼすのである。

 必要のないキーが多すぎるのも問題。テンキーなど大半の個人ユーザーには必要ないだろう。キーピッチも日本人の手には大きすぎる。指の届かないキーがたくさんある。

 この大きさを日本人は何の工夫もなく取り入れた。ユーザーの要望がないからだろう。パソコンの性能は云々するが、キーボードの使い勝手には無関心である。

● 省スペースキーボードを発見

 キーボード選び。「小型キーボード」をキーワードにサーチエンジンで検索してみた。機種は少ない。ボクの条件に合うものとなるとさらに選択肢は減る。片手キーボードなるものもあって興味を引いたが、今回は見送った。

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Happy Hacking Keyboard Lite2

 購入したのはPFUの「Happy Hacking Keyboard Lite2」 (*3)。ネット通販で入手、購入価格5,800円(オープン価格)。

(*3) 購入モデル(PD-KB210W/P)は日本語配列(英語配列タイプもあるがSpaceキーが長い)、PS/2接続(USB接続タイプもある)、色はライトグレー(黒もある)。 PFUのキーボードのサイト

 Made in Thailand。高級感はないが、表面の仕上げは悪くない。

 本機は極めて特徴的なキーボードである。圧倒的に小型で、占有スペースは標準キーボードの45%ほど(写真下)。幅29.4センチ、奥行12センチ。外形はキーのそばぎりぎりまで削減されてムダがない。MITSUMIのミニキーボードよりずっと小さい。

 それでもキーピッチはフルサイズ(19mm)を実現。これはボクの選択条件(2)からは外れる。が、標準ピッチに慣れているフツーの人には大きなメリットだろう。

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隣のキーボードが小さく見えま〜す Fnキーとの複合キー

 キー構成も独特だ。標準キーボードの右3分の1を切り落としたような構成。テンキー、独立したPF1〜12キー、独立したInsert、Deleteキー、Home、Endキーなどはない。インジケータもない。独立したカーソルキーが右下に押し込まれているのはノートパソコンと同じ。109キーボードのろくでもないキーが一掃されてすっきりしている。

 Fnキー(ファンクションキー)なる独自のキーが左右に1つずつある。キーの手前面に刻印(PF1〜12、→、↓、del、Home、End、PgUp、PgDn、Winなど)が記してあり、Fnキーを押しながらこのキーを押すと各機能が実現できる。このへんもノートパソコン並み。Fnキーが2つあるのはもちろん左右どちらか空いた手で押下するため。単体のキーボードでこんなキー構成は珍しい。

 キーは全部で65個。これでフルキーボードとほぼ同じ機能が実現できる。

 Fnキーを押しながらF1キーを押すと、通常のF1キーのコードがパソコン本体に送られる。よって専用ドライバーソフトなどは不要。キーレイアウト変更ソフトや親指シフトソフトも使用可能(ただし、キーレイアウトの設定変更が必要)。

● 使ってみると

 使い始めて2週間。従来通り、ボクが編み出した「右手キー1個ずらし」の方法で親指シフト入力を実現。その他に多くの機能キーをカスタマイズして使っているが、問題なく使える。 (*4)

(*4) 親指シフト化とキーカスタマイズについては、過去のコラムを参照。現在のキーレイアウトは当時とは異なり、今も改良中。

 テンキーがないのでマウスが拾いやすい。マウスの可動スペースが広く取れる。キーボードの両側にゆとりがあるというのはいいことだ。

 キーピッチが標準サイズの割にはストロークが(VAIO標準キーボードに比べて)浅めなので、キータッチが軽い感じ。高速打鍵でも軽快に入力できる。この点も好印象。

 非常にメリットの大きいキーボードだが、デメリットもある。

 PF1〜12、→、↓、delete、Home、End、PageUp…などがFnキーとの複合キーとなったこと。指1本で押せたキーに両手が必要になった。これはデメリットと言わざるを得ない。

 表計算ソフトや画像ソフトなどで機能キーを多用する向きには操作性がやや低下する。そういうアプリを片手のキー操作中心に使う人には向かないかもしれない。本機は文字入力中心の操作に最適化したキーボードと言える。「プログラマ向けのキーレイアウト」とうたっているのもそのせいだろう。

 また、「Ctrl+Alt+Delete」のような複数キーの同時押下は、さらにFnキーが増えるので少々押しにくい(ボクのカスタマイズなら問題ない)。ショートカットキーを多用する人は操作性が低下する。また、「Shift+カーソルキー」で範囲選択するのも困難(ただし独立カーソルキーを使うならこの限りではない)。

 しかし、この辺りの使いにくさはカスタマイズでうまく解消できるはず。「キーボードはカスタマイズして使うもの」と認識している人なら問題は少ないだろう。ボクの場合、→、↓、delete、Home、End、PageUpなどを単独キーに割り付けているので、特に不満はない。

 本機は見方を変えると、→、↓、del、Home、End、PageUp…などがタッチタイピング可能な位置に来たことになる。これは大きなメリットである。PF1〜10も数字キーと共通なのでタッチタイピングできる!

 惜しむらくは2個のFnキーが意外に押しにくい位置にあること。これを小指でタッチタイピングするには少々慣れが必要。FnキーをSpaceキーの下あたりに置けば(キーボードの奥行きは増すが)ぐっと操作性が向上するのだがナー。

 このキーボードのメリットを生かすにはFnキーのタッチタイピングがカギだ。ぜひFnキーに慣れて、上記の機能もタッチタイピングで実現するようにしたい。 (*5)

(*5) 例えばPageUpキーなどを単独キーに割り当てておけば、片手操作の時は単独キーで、両手操作の時はFnキー併用のタッチタイピングで、という2通りの押し方ができる。

 マニア好みのキーボードだが、標準ピッチだからフツーの人にも使える。机が狭い人、機能キーもタッチタイピングしたい人、マウスを頻繁に使う人にはお勧めできる。

 満足できるキーボードが手に入った。コーヒーをこぼさないよう気をつけようっと。


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