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  ほぼ世捨て人/1998年7月

クルマを持たない主義

  〜 クルマ所有の経済性を考える 〜

ほぼ世捨て人もくじ


 現代社会はクルマが必要不可欠という。「クルマがなければ生きていけない」と公言する人さえいる。クルマを買う前はどうやって生きていたのだろうか。

 ボクはクルマを持っていない。移動手段は自転車、徒歩、電車だが、徒歩や自転車では危なくてまともに通行できないのが現代の道路事情。路上ではクルマに乗っているのが一番安全だ。

 何十年か前までみんな車を持っていなかった。それでも社会は動いていた。車が普及したために車がなければ不便な社会になってしまった。

 クルマを所有することの経済性を分析してみよう。まず免許取得にかなりの時間と費用がかかるが、免許はすでに持っているものとする。150万円の自家用乗用車を買って乗り回すための経費を調べでみた。

 車には税金がかかる。車の購入時にかかる「自動車取得税」は車の価格の5%。150万円の新車なら75,000円だ。「自動車税」が毎年34,500円かかる(1001〜1500ccの場合)。さらに「自動車重量税」があり、新車購入時に次の車検までの3年分56,700円、その後は2年ごとの車検時に37,800円かかる(1〜1.5トンの乗用車の場合)。

 自動車保険にも加入しなければならない。自賠責保険の掛け金は1年契約で16,950円。その他に任意保険の掛け金が年額10万円ほどかかる。

 駐車場を借りると駐車料金がかかる。どこへ行くにもガソリン代がかかる。行き先によっては有料道路や高速道路の通行料、駐車料金が要る。

 さらにオイル交換、タイヤ交換、洗車と、メンテナンスの手間と費用もバカにならない。あまり乗らなくても定期点検、車検、免許証書き替えの費用がかかる。

 トータルの維持費を大雑把に試算すると、年間約50万円と出た。ボクのような貧乏人が持つものではないことがわかる。  つづき

 これだけの費用と時間をかけて、果たしてどれだけクルマを利用するのだろうか。同僚でバイク乗りの男がクルマを買ったので、遠出したかと聞くと、休日はどこも渋滞するので乗らないという。平日ももちろん乗る機会がないから、結局ほとんど乗らず仕舞という。

 車を持つと行動範囲が広がると思いがちだが、むしろ渋滞のために狭まることになりかねない。人の行動範囲は移動手段だけで決まるわけではない。たとえ自転車しかなくたって、意志さえあればボクのように日本一周することもできる。要は行動力の問題だろう。

 クルマにお金をかけるくらいなら、電車やバスをぜいたくに乗り回した方が安くつく場合も多い。電車賃は乗った分だけ払えばよく、メンテナンスも必要なし、税金も保険も要らない。渋滞がなく、移動時間が正確。本を読みながら移動できるのもメリット。単なる移動手段と考えるなら電車をフルに活用しない手はない。

 特に日本の都市部は世界一公共交通機関が整っているので、クルマを持つ実用的メリットは少ないと言っていいだろう。そこで敢えてクルマを持つ人はよほど使用頻度が高いか、お金に余裕があるか、さもなくばお金の計算ができない人だろう。

 ボクもクルマが欲しいと思わないではない。旅や登山、ハイキングの足として利用価値は高い。自転車や電車でもいいのだが、泊まりがけの場合、野宿地探しに苦労する。旅好きのボクにとってクルマの最大のメリットは「中で寝られること」だ。

 過去に何度かクルマの所有を考えたことがある。が、経済観念の発達した(ケチな?)ボクとしては、いつも経済的メリット少なしという結論に達する。貧乏なのにクルマを持って、所得のかなりの部分を維持費に費やす人がいるが、クルマのために働くような生活だけは避けたいのである。

 ボクの人生、今後もクルマを所有・維持するだけの所得を得る見込みがないので、未だに免許も取っていないのである。


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