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  ほぼ世捨て人/1998年12月

冬の寒さに耐える

  〜 貧乏人の防寒対策 〜

ほぼ世捨て人もくじ


 北海道出身なので寒さにはそこそこ強い。と思っていたが、東京の冬の寒さには驚く。といっても室内の話だが。

 神奈川県、関東南部の冬というのは北海道の秋に相当し、外はちっとも寒くないのだが、家の中は抜群に寒い。理由は室内を暖房しないからで、早い話が家の中と外がほとんど同じ気温なのである。

 北海道でさえ部屋の中でこんなに寒い思いはしなかった。冬の北海道、屋外は東京と別世界の寒さだが、部屋の中はストーブをがんがん焚くのでシャツ一枚で過ごせるほど暖かい。

 東京では暖房器具として主にコタツなるものが使われる。北海道にいた時分(高校三年生まで)はコタツを見た記憶がない。あるいは他人の家にはあったのかもしれないが、生まれて初めてコタツを見たのは18歳で北海道を出てからだ。北海道では一般的な暖房器具ではない。

 コタツを暖房器具と呼ぶべきか疑問もある。足元だけ暖めてごまかしているわけで、カイロや湯たんぽと同じで気温はまったく変わらない。コタツに入っていれば腰から下は暖かいが、手は冷たいし、立って歩き回れば効果ゼロ。暖房としては手抜きであり、間に合わせである。

 関東南部ではコタツだけですませる家もある。北海道ではストーブで室内を徹底的に暖める。この差はどこから来るのか。冬に対する意識の違いだろう。関東南部は暖房がないと寒いけど、我慢できないほどではないし、火の気がなくても凍死する心配はない。部屋を暖める暖房はオプション、ぜいたくであり、省略可能である。よって暖房に対して無頓着、いい加減。めんどくさければコタツで足だけ暖めてごまかす。一方、北海道など北国では暖房がなければまちがいなく凍死するから、家の中の暖房に手を抜くことはできない。部屋の中をストーブあるいは囲炉裏、暖炉で暖めることはぜいたくではない。旧石器時代からの必須であり、省略不可。その違いだろう。

 わが家では一昨年まで石油ストーブがなかったので、冬の寒さで随分被害をこうむった。部屋にまったく火の気がないので、どんどん冷え切っていく一方である。テーブルもキーボードもビデオデッキのリモコンも、何もかもみな氷のように冷たくなってしまう。

 凍傷、しもやけ、あかぎれは普通野外で発生するものだが、ここ神奈川では部屋の中で起こる。冬になると手足の指や耳たぶが赤くただれてくる。手の甲がひび割れてくる。症状が進むとかゆくてたまらない。特に無職で一日中家にいた年は被害甚大だった。北海道でもこんな経験はなかったので、最初原因がわからなかった。最近になってこれがしもやけ、あかぎれというものらしいと気づいたのである。厚手の靴下を履き、薄手の手袋をしていても手足が冷えきってしまう。ある程度冷たくなると神経が麻痺し、冷たさを感じなくなるので、一日中冷え切っていても気がつかないのだろう。

 寒さの被害といえば、うちのビデオデッキの1台がしばしば動かなくなる。6年ほど酷使してかなりガタがきて、毎年気温が下がる11月頃から調子が悪くなり、再生やイジェクトができなくなってくる。そろそろ寿命か。

 去年の冬、1万円余りで石油ファンヒーターを購入。これが抜群に暖かい。灯油節約のため設定温度は12度(これ以上低くはならない)。暖気が天井にたまって効率が悪いので、扇風機を併用して空気をかきまぜながら使用。一冬で灯油4缶程度で間に合った。1缶(配達料込みで)千円ほどである。  つづき

 これで冬の寒さからおさらば。…のはずだったが、今年の冬は生活費節約のため(コラムのサイト立ち上げが遅れ、収入がないため)灯油を買わない方針で行くことにした。再び火の気のない部屋に逆戻り。コタツはあるが、机として使っているだけ。電気料金がかさむので使えない。コタツのスイッチを入れるくらいなら灯油を買う。

 今冬は完全装備で寒さに臨んだ。まず手袋は常に履く。靴下は普通のものでは間に合わないことがわかったので、登山用の厚手のウール製を2枚重ねにして履く。まるで冬山登山の装備である。頭には毛糸の帽子をかぶり、耳たぶを守る。頭は常に空気にさらされ放熱器のように熱を逃すので、帽子をかぶるのは非常に効果的。首からも体温が逃げやすいので、マフラー代わりに余っているスエットパンツを首に巻く。素材が厚手なのでマフラーより暖かい。。

 早朝などにキーボードを打つのは手が冷たくて実に辛いものだ。かといって普通の手袋を履くとキーが打てない。そこで2年前から写真のような指切り手袋を買って使っている。300円前後だったか。効果絶大なのでお勧めだ。

指切り手袋でキー操作

 服は徹底した重ね着で防寒する。現在、上は8枚、下は5枚着ている。風呂に入る時に脱いだり着たりするのが大変である。

 以上の防寒スタイルは家の中にいる時の恰好としてはかなり変である。訪問者があっても出られないが、いつも居留守を使うのでかまわない。

 暖かく寝る方法。布団は薄い夏布団しか持っていないので非常に寒い。寒いと熟睡できない。熟睡できないと睡眠時間が延びる。他の季節なら7時間半ですむ睡眠時間が冬場は8時間必要、時間がもったいない。いかに暖かくして寝るかは切実な問題だ。

 寝室にテントを張ってその中に布団を入れて寝るというのは以前から考えている方法だが、まだ実行していない。テントは一人用の超小型とはいえ、四畳半にテントを広げてみると意外にでかいものである。あまりにもスペースを取り過ぎるのでやめた。もう少し寝室が片付いたらいずれ挑戦してみたい。

ダンボールで作った寝床

 テント代わりにパソコンのディスプレイが入っていたダンボール箱の中に布団を突っ込んで寝ることにした。幅が狭いので少々窮屈、頭と足が出るのも難点だが、効果はある。一冬これでいくつもりだ。ダンボールで寝るとはまさにホームレス状態。置き場所に困るパソコンのダンボール箱もこんな用途があったのか。

 敷布団の上にキャンプ用のマットを敷き、その上に寝る。アルミ箔が熱を反射するので暖かい。足は毛糸の靴下を履く。ペットボトルに熱湯を入れて靴下をかぶせ、湯たんぽとして使用。効果抜群である。

 神奈川での越冬も楽じゃない。春よ来い、早く来い。来年の冬こそは灯油ぐらい買って暖かくいきたいもんだ。


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