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  ほぼ世捨て人/1999年11月

カゼ薬の効能

  〜 カゼ薬でカゼは治らない 〜

ほぼ世捨て人もくじ


 秋が深まり、テレビにカゼ薬のCMが増えてきた。

 どのCMもよく注意して見ると、必ず字幕でこんな表示がある。

(せき、発熱…など)カゼの諸症状の緩和に

 この一文はどういう意味か。
「カゼに効くってことでしょ?」
効くというのが「治る」という意味なら、この解釈は0点だ。

 この表示の本当の意味はこうだ。

「カゼが治るわけではありません」

 つまり「症状はやわらげるけど、カゼを早く治すような効果はないよ」と断っているのである。そういう決まりなのだろう。

 ただし、小さい字で短い時間しか表示しないので、注意しないと読めないようになっている。読めたとしても、その意味を正しく理解する視聴者は少ない。

 カゼを治すならズバリ「効能:カゼ」でいいわけだが、効能書きには決してそうは書いていない。必ず「効能:カゼの諸症状の緩和」と書いてあるはずだ。

 風邪はウイルスによって起こるので、風邪を治すにはウイルスを退治する以外に方法はない。が、そういう薬はまだ発明されていない。発明した人はおそらくノーベル賞だろう。

 カゼ薬は風邪を治す薬ではない。風邪の症状を軽くする薬である。熱が40度あったら39度に下げる、セキが止まらなかったらせき込まない程度にする、タンがからんでいたらタンを切る、…というものである。「症状を抑える」ことと「治す」ことは根本的に別のこと。鎮痛剤で虫歯が治らない道理である。

 だからカゼ薬など飲んでもしょうがない、と言うのではない。問題は、消費者が「カゼが治る」と信じて買い、飲んでいる点にある。だます方が悪いのか、信じる方が愚かなのか。

 CMで「カゼに効く」「よくなる」といった表現が出てくるのも問題だ。「症状が軽くなる」という意味か「治る」という意味か、どちらにもとれる。無知な大衆を惑わす紛らわしい表現である。JAROにチェックしてもらいたいところだ。  つづき

 CMの中で「ママね、○○飲んだらすっかりよくなったわ」などと言うのはよくない。「ママね、○○飲んだらカゼの諸症状が緩和されたわ」と言うべきだ(?)。

 「カゼひいたらクスリ飲んで寝るのが一番だ」と言う人は多い。風邪は薬を飲んでも飲まなくてもいつかは治る。治るというのは、体内の免疫機能とウイルスの闘いに決着がついた結果である。カゼ薬はこの闘いに関与していないのだから、早く治る道理はないのだが、みんな「クスリで治った」と信じている。これは一種の信仰である。勘違いなら正すことができるが、信仰は直せない。

 日本は薬漬けの国。みんなが薬を信じている。薬をもらうために病院にかかる。薬をたくさん出す医者は「いい先生」と評価される。「薬は飲まなくていいから、早目に休みなさい」と言ったのでは医者は勤まらない。薬をたくさんもらって患者はホクホク顔、薬代は健康保険がカバーするから負担は軽いし、医者も病院も儲かる。製薬会社もこの薬信仰の上に成り立っている。それで大衆はみんな満足している。バカにつける薬はなんとやらか。

 風邪を治す一番よい方法は、仕事を休むこと、よく食べて早目に寝ること。体が本来持っている自然治癒力でウイルスを退治するしかないのである。

 以前、1週間以上もセキがとれなくて困ったことがあった。お菓子として売られている“のど飴”を試してみた。手当たり次第に数種類買ってきて、順次なめてみた。

 その結果、よく効くもの、そこそこ効くもの、さっぱり効かないものがあり、効果の差が歴然と出た。よく効く飴はなめてすぐにセキが静まり、一粒で効果が1時間以上持続した。よく効く飴の成分を見ると、どれもカリンエキスなるものが含まれている。これがセキを止める成分らしい。

 それ以来、セキが止まらない時はのど飴をなめることにしている。これも一種の薬信仰には違いないが、副作用は少ない(と思う)のでお勧めできる。龍○○や浅○○より安上がりで、しかもおいしい。


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