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  ほぼ世捨て人/2001年12月

外来語氾濫罪をさばく

  〜 ユーミンを添削指導する 〜

ほぼ世捨て人もくじ


 外来語や流行語をやたらに使う人がいる。ボク自身は、どちらかといえば文章の中に外来語や新語はあまり使わない方だ。言葉に関しては意外に保守的なのである。

 言葉は世に連れ、世は言葉に連れ。世の中の動きに合わせて外来語を取り入れるのは悪いことではない。

 とはいえ、物事には限度というものがある。ここに限度を知らない人たちがいる。

 外来語氾濫のA級戦犯は長嶋茂雄・元監督だろう。話の中に意味もなく外来語をはさみたがるミスター、「必要は発明のマザーだ」と言ったという。メイク・ミラクルって何だ? 「奇跡を起こす」と言いたいなら「do miracles」だ。miracleは可算名詞だから、冠詞も-sもつかない形でmake miracleというのはあり得ない…などと説いてもムダか。

 アーティストでは桑田佳祐あたりが外来語氾濫罪で無期懲役。松任谷由実も重罪に値する。

 今回は松任谷由実(荒井由美)の曲をいくつか取り上げて添削し、彼女の罪を裁きたい。

■ 「時はかげろう」

目を閉じて深く吸い込む
この星のエナジーを
誰のために 君のために
持ち帰ろう 形にして

 エナジーはないだろう。エネルギーという立派なドイツ語があるのに、なぜ急に英語読みにするのか。ときどき怪しげな外来語をはさむのがユーミンの性癖である。

→ 目を閉じて深く吸い込む
  この星のエネルギーを…

■ 「TROPIC OF CAPRICORN」

群れ飛ぶアルバトロス 灰色の逆光
ひび割れた唇のつぶやきは声にならないの

 アルバトロス(albatross)と言われてもイメージがわかない人が多いだろう。なぜこんななじみのない動物名を使うのか。立派な和名があるのだから、それを使ってほしい。

→ 群れ飛ぶアホウドリ 灰色の逆光…

■ 「ダンデライオン〜遅咲きのタンポポ」

君はダンデライオン
傷ついた日々は彼に出会うための
そうよ運命が用意してくれた大切なレッスン
いま素敵なレディになる
  つづき

 ダンデライオンとは一体どんなライオンかと思ったら、どうやらタンポポ(dandelion)のつもりらしい。ならばなぜタンポポと言わぬか。

→ 君はタンポポ

 「どうでもいいけど、この歌詞、タンポポに変えても意味不明なんだけど」って? 確かに意味がよくわからない。ええい、タンポポがだめならタンポンにしてしまえ。

→ 君はタンポン
  傷ついた日々は彼に出会うための…

 タンポンに変えたら傷ついたけど大人のオンナになった、という歌だ。

■ 「中央フリーウェイ」

中央フリーウェイ
調布基地を追い越し 山にむかって行けば
黄昏がフロント・グラスを染めて広がる
中央フリーウェイ
片手で持つハンドル 片手で肩を抱いて
愛してるっていってもきこえない 風が強くて

 言わずと知れたユーミンの代表的なヒット曲。調布や府中の高速道路から実際に見える景色を歌ったと言われる。

 フロント・グラスとあるのはフロントガラスのことだろう。グラスなら飲酒運転である。

 ちなみにフロントガラスもハンドルも和製英語。すでに日本語として定着してしまったから仕方がないが、正しくはそれぞれwindshield(ウィンドシールド)、steering wheel(ステアリング・ホイール)という。

 なお、歌詞にあるように恋人を抱いて愛をささやきながら高速を飛ばすと、安全運転義務違反で減点2となる。

 ところで中央フリーウェイなんて高速道路はどこにもない。なぜ勝手に道路名を変えるのか。ちゃんと正しい名称を使ってほしいと国土交通省が言ったかどうかは知らないが。

→ 中央自動車道
  調布基地を追い越し
  山にむかって行けば
  黄昏がフロントガラスを染めて広がる…

 この曲のタイトルが「中央自動車道」だったらこれほどヒットしただろうかって? 知らん。

 ユーミンは外来語氾濫罪で懲役15年はまぬがれないだろう。加えて、オトコは安全運転義務違反と飲酒運転で免許取り消しだ。


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