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  ほぼ世捨て人/2002年5月

バロック・ライブラリ計画

  〜 最近バロックにハマっている 〜

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 最近のポップス、ジャズ、気に入った曲がほとんどない。

 ミュージシャンはカリスマであり、ファンは心酔しきっているから、一人よがりのつまらぬ曲でも絶賛される。

 ゴミの山から宝を探すような状況にウンザリだ。新しいミュージシャンをさがすこともなくなった。

 以前からクラシックを開拓してみようと思っていたので、それを実行に移すことにした。

 クラシックにはまるで知識がない。ジャンルは広いし、どこから手をつけようか。

 まずは誰でも知ってるベートーベンやモーツァルトから・・・では通俗的すぎていやだ。よく知らないくせに好みはうるさいのだ。もっとマイナーで味わい深いジャンルはないか。

 NHKのFMのクラシック番組を一通り聞いてみた。その中でしっくりきたのが『あさのバロック』。庵主の好みはバロックだとわかった。

 ボクの場合、出費を抑えるという至上命令がある。CDを毎月何枚も買うというわけにはいかない。金をかけずに楽しむために、ソースは『あさのバロック』のエアチェックとする。

 今どきFMを録音する人はいない。エアチェックという言葉も死語になるだろう。

 だが、FMのバロックはバカにしたものではない。ソースの豊富さは抜群。相当なCDコレクターでもNHKのバロック・ライブラリにかなう人は少ないはず。

 『あさのバロック』は毎朝6時から55分間放送。曲の合間に簡単な解説がつくのもありがたい。

 NHKホームページの番組表から作曲者、曲名、演奏者、レコード番号が取得できる。

 毎日1時間弱、CD1枚分のバロックが手に入る。これを利用しない手はない。丸一年録音すれば、CDを360枚買ったのと同じ。頭の中にバロックの鳥瞰図ができるだろう。

 MDデッキで2LPモードで録音すると、必要なMDは年間120枚、1万2千円。安いものだ。  つづき

 その中から気に入った曲だけ残してバロックのライブラリを作る、という方針を立てた。

パーセルのCD、NAXOSレーベル

 バロックとは何か。一般にはバッハ以前(バッハを含む)で、1600年から1750年頃までとされる。

 概してクラシックより編成が小さい。オーケストラのように人を圧倒するようなハッタリはないが、メロディが優雅で美しく、味わい深くて飽きない。

 じきにボクの好みはヘンデルであることがわかった。

 バロックは、じっくり分析的に聴くもよし、疲れたときに気分転換に聞くもよし。BGMとして常に流しても邪魔にならない。子守り歌代わりにしても実によく寝つけるのである。

 バロックを聞くと気持ちが落ち着き、穏やかになり、精神的な疲れがとれてリフレッシュする。ヒーリング効果だ。

 現代はミュージシャンが偉い時代だが、バロック時代は聞く人が偉かった。聞くのは王侯貴族であり、音楽家は貴族に雇われた職人のような存在。音楽は主役を喜ばせることを主眼に作られた。バロックが聴いて楽しいのは当然なのだ。

 向学のためにインターネットでバロックの個人サイトを探してみたが、2、3しか見つからず。予想外に少ない。

 クラシックファンの悩みは“人に言えない”ことではないか。「好きな音楽は?」と聞かれて「クラシック」と答えるのは勇気がいるだろう。ましてバロックとなれば、友だちを失うことを覚悟しなければならない。ホームページなんぞでカミングアウトできないということか。

 この先、バロック以外の時代に好みが広がる可能性もある。バロックの後にはクラシック、バロックの前には古楽という豊かな泉がある。お楽しみは尽きない。


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