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  ほぼ世捨て人/2003年3月

金儲けの秘訣

  〜 人を使うのが長者への道 〜

ほぼ世捨て人もくじ


● 億万長者への道

 大金持ちになりたい人のために金儲けの秘訣を伝授しよう。また大ボラが始まったか。人一倍貧乏なボクが説く金儲けの秘訣。これほど説得力のないコラムはない。でも大儲けのコツを知ってるのは本当だ。じゃなぜお前は大金持ちにならないのか? 金儲けってやつはつまらないんだなーこれが。負け惜しみ言うな? 負け惜しみじゃないのだ。

 まず大金持ちの定義。億万長者といかないまでも年収5千万円以上の人をここでは大金持ちとしよう。

 どんなに才能に恵まれた人でも一人で稼げる額なんてたかが知れている。徹夜で働いたところで一日は24時間しかない。フツーの人間が自分の能力だけで悪いことをせずに稼げる額はせいぜい年間一千万円台、月収にして100万円程度だろう。サラリーマンでいうと部課長クラス。せいぜい小金持ちだ。医者も大金持ちと呼ぶにはイマイチ届かない。

 自分の実力だけで大金持ちになった人。すぐに思い浮かぶのがスポーツ選手と芸能人だ。その他には…というとちょっと思い浮かばない。

 たとえば野球選手。サラリーマン以上の収入を得るには人一倍の才能と努力が必要。野球がうまいだけでは選手にすらなれない。入団できるのはバツグンの野球センスを持った超エリート。その中でも一軍入りして数千万円の契約が取れる選手はほんの一握りだ。芸能人だって同じだ。まず芸能人になるだけでも大変な強運の持ち主。運よく売れっ子になっても当分の収入はサラリーマン以下。生き残って高収入につながるのは志望者何十万人に一人か。宝くじに当たるようなものだ。スポーツ選手や芸能人として成功するのは極めて特殊な例だとわかる。フツーの人がそういうものをめざしてもまず失敗する。

 大抵の労働収入は時間をお金に変えることによって得る。これでは自分の能力だけで大儲けするのはムリ。大金持ちをめざすなら「人を使うこと」しかない。できるだけたくさんの人を動かしてその上前をはねること。つまり経営である。自分がやるのではなく人にやらせ、その利益の一部が転がり込むようなしくみを作ること。そのしくみをたくさん持つこと。事業展開である。

● 儲かる発想

 脱サラしてラーメン屋をやるとする。「一生懸命修行して日本一うまいラーメンを作るぞ」。これは貧乏人の発想である。うまいラーメンを作り、立地条件にも恵まれて大当たりしたところで、稼げる額はたかが知れている。客の回転率、作れるラーメンの数には限度がある。店が軌道に乗ったらラーメン作りを他人にまかせてチェーン展開を図ること、これが儲かる発想だ。自分でラーメンを作っている限り大金持ちにはなれない。

 手に職を持つとか、技術を磨いて優秀な職人になるという発想はダメ。職人で大金持ちになった人はいない。職人を雇う側に回らねばならない。

 芸能人をめざすくらいなら芸能人を使うタレント事務所を経営するという発想がマル。

 自分でコラムを執筆してネットで販売するなんてのは貧乏人の発想。他人が作ったコンテンツを集めて販売するという発想でなくちゃ。

 ビル・ゲイツが億万長者になったのはソフト作りを他人にまかせて経営に回ったからだ。彼がもっと優秀なプログラマで、経営よりプログラム作ってる方が楽しいやと思ったら億万長者にはなれなかった。  つづき

 「人にやらせる」のが金儲けの発想。では自分は何をやるかというと、経営と人の操作だ。企画、調査分析、交渉、経営会議、人事管理、金策回り、人脈作り、懇談にご挨拶。部下を集めて叱ったりなだめたりすかしたり…。これが金儲けのための仕事である。実につまらん。こんなことに人生を浪費したくないとボクは思う。そういう人は金儲けの才能がないのである。

 自分の富を殖やすために他人を低賃金で働かせる。自分の夢と幸せのために他人の尻を叩く。それを不条理と思わずにできるのが経営の神様である。「人を使わず、人に使われないのが夢だ」なんて言ってるどこぞの世捨て人は絶対金持ちになれないわけだ。

 大金持ちになるのに学歴は必要ない。長者番付に載るような人は高卒や中卒の割合が高い。松下幸之助、本田宗一郎しかり。東大を出て大金持ちになる人は少ない。東大を出るほどの頭があれば自分の力で何かをやり、金儲けよりおもしろい人生を選択するだろう。

 結論。金儲けの秘訣は「人を使うこと」。なんだ、それだけかって? 金儲けの“秘訣”を教えると言ったが、方法を教えるとは言っていない。具体的な方法は邱永漢にでも聞いてほしい。

 約束通り金儲けの秘訣を教えた。アナタも今日から金儲けに励んでほしい。えっ、金儲けなんてつまらない? そら見たことか。ボクの言った通りだ。人に使われるのは嫌いだが人を使うのはもっと嫌い、そこまでして金持ちにならなくてもいいやと思ったアナタは金儲けの才能がないのだ。ボクやアナタが貧乏な理由はそういうことなのだ。

● 長者の生活

 人生、金儲けより大切なのはお金の使い方である。日本の大金持ちは金の稼ぎ方は知っているが、使い方は知らない。お金を使って打ち込みたい趣味がない。しょうがないから興味のない高級外車を買ったり、一匹百万円のコイを泳がせてみたりする。お金を使うことには情熱がないのだ。

 松下や本田が莫大な財産を使って趣味に打ち込んだという話は聞かない。老後まで経営にタッチする生涯経営者、仕事人間なのである。ここが日本の億万長者の特徴。

 欧米の大金持ちはちょっと違う。40代、50代で生涯の財産を築いたら会社を他人に譲って引退。残りの人生は趣味の絵画や骨董に凝ったり、芸術家のパトロンになったり、悠々自適、遊んで暮らす人が多い。

 ボクの場合、お金の使い方はよく知っているが、稼ぎ方を知らない。だからこうして1円にもならないホームページを一生懸命作っている。うまくいかないものだ。

 ではお金があれば幸せになれるか。収入が100倍になれば100倍幸せになるか? 1万円の価値が100円に下落するだけで、それほど幸せにはならないはず。“一人インフレ状態”だ。これを限界効用逓減(ていげん)の法則という。リンゴが2つになっても幸せは2倍にならないという法則である。

 たった一度の人生、つまらない金儲けなんぞに費やすのはもったいない。限界効用逓減の法則を利用してお金の価値を引き上げ、100円使うのにワクワクしている方が幸せなのだ。これは負け惜しみだが。


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