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  ほぼ世捨て人/2003年3月

企業戦士のリストラ

  〜 リストラは方向転換の好機 〜

ほぼ世捨て人もくじ


 ビジネス社会に愛想をつかして足を洗ったのが30歳。あれから15年、定年まで走り続けると思われた企業戦士たちがぽろぽろとリストラされている。

 結構、結構。結構毛だらけ猫灰だらけ、専業主婦は座りションベンだ。なんて言うと相当イヤミか。

 出世競争に明け暮れた企業戦士がリストラされる時代。「会社が生き残るためだ」と管理職から冷酷な辞令が下る。「オレも辞めるからお前も辞めろ」というならわかるが、そうではない。「オレは辞めないけどお前は辞めろ」というのである。なんてひどい話だ…とは思わない。

 リストラ戦士は出世競争に負けたのである。もし勝っていたら他人にリストラを通告していたはずだ。

 中高年の企業戦士は長年、利潤追求、組織第一という価値観に従ってきた。それもただ従っただけではない。部下の尻を叩き、組織の価値観を押しつけ、積極的に会社の論理を支えてきたのだろう。今、その論理によってリストラされたわけだ。何も文句はないはずだ。「○×株式会社バンザーイ!」と叫んで散っていけばいいのではないか。

 会社が不要な人員を整理するのは当たり前、不況でなくともやるべきこと。リストラされて運が悪いというより、それまで能力に見合わぬ高給をもらえたことこそ運がよかったというべきだろう。

 リストラされてかわいそう?本当にかわいそうなのは無能な上司の下で安月給で働く有能な若い部下たちだろう。

 会社を取ったら何も残らないのが日本のサラリーマン。たかが会社をクビになったくらいで、まるで人生の終わりかのように大騒ぎする。会社を辞めると陸に上がった魚のように死んでしまうらしい。

 ボクは15年ほどフリーターをやっているが、最近は不況による減産でしょっちゅうクビになる。が、どうってことはない。仕事なんて他にいくらでもあるさと割り切りが早いし、職探しも早い。身軽でなければ生きていけないのである。アルバイトは安い人材だから、不況の最中でも結構仕事はある。  つづき

 中高年リストラ組の再就職はむずかしい。もともと給料と能力のバランスが悪いからリストラされたのに、収入レベルを落とさずに仕事を探そうとするから無理がある。前職の経歴や過去の栄光なんか捨ててアルバイトでも探せばいいと思うのだが、やせても枯れても企業戦士。アルバイトなんかできるかとプライドだけは一人前だ。

 膨張しすぎた生活を切りつめればアルバイトでも充分生きていけるのである。家、クルマ、各種ローン、子供の教育費、生命保険…、不要なものを諦めればよい。生活のレベルを収入に合わせること。

 「お前は女房も子供もいないからそんな気楽なことが言えるんだ。」

 そうだろうか。サラリーマンは退職金は出る、失業手当ももらえる。長年勤めて貯めた貯金、持ち家やクルマもあるだろう。何といっても妻というもう一人の働き手がいるのは大きい(こんな事態に女房を遊ばせておく手はない)。なんと恵まれた失業か。一体どこに困ることがあるのだろう。

 リストラお父さんは単に経済力を失うだけではない。精神的支柱まで失ってしまう。リストラされたことを妻に告白できず、毎日出勤するふりをして公園で時間をつぶす人もいるというから情けない。その程度の人間が会社では部下にイッパシの口を利き、説教をたれていたのか。

 会社をクビになったら人生の方向転換をする絶好のチャンス。会社が敷いたレールを歩むのではなく、自分で道を切り開くという発想をすべきだ。

 以前はバリバリの企業戦士だった、それがあるとき会社の価値観を捨て、安定した収入をあきらめ、田舎で百姓を、漁師を、うどん屋を、木工職人を始めたという人がいる。そのきっかけは、多くがリストラや倒産である。禍を転じて福となす。こういう人には拍手を送りたい。

 ただ問題は、会社から放り出されて初めて会社の論理に疑問を持ったという点だ。クビにならなければそのままの価値観で定年まで突っ走っていたわけだ。オウム信者が警察に捕まって初めてマインドコントロールが解けるのと似ているではないか。


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