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  ほぼ世捨て人/2004年5月

血液型性格判断のトリック

  〜 血液型番組のデタラメぶり 〜

ほぼ世捨て人もくじ


● 発掘!だめだめ大事典

 先月、フジテレビ『発掘!あるある大事典 ll 春の芸能人血液型スペシャル』なる番組を見た。どうせいい加減な内容だろうと想像はついたが、予想以上にひどいものでガク然とした。

 ゲストタレントが総勢12人。こんなトークを展開する。

「A型なので、水回りをきれいにしないと気がすまないんです」
「亭主も身内もみんなB型で身勝手なので、結婚前の会食のときケンカになって、破談になりそうになって…」
「B型って協調性がなくてムカつくんだよね」
「O型の口癖って、集まると最初に必ず“どうする?”って言いますよね」
「そうそう。言う言う。」

 90分スペシャル版の1/3がこんな世間話で盛り上がるという悲惨な内容。信じている人にはこの上なく楽しい会話なのだろう。嬉々として話すタレントがトッテモ馬鹿に見えた。出演者はもちろん、制作スタッフもみな血液型性格判断を信じきっていることがわかる。念のために言っておくが、これはお笑い番組ではない。科学的な生活情報を提供する番組である。

 番組曰く、統計学に基づいて提唱された「血液型による性格の傾向」は、相性や人間関係を探る1つの材料となっているという。最初から血液型と性格は関係があることを前提にした番組作りである。血液型によって保育園児の遊び方や学生の焼き肉の食い方に差が出たとし、偏見に基づくデータをさも統計を取ったかのように紹介する。

 番組は街角の1,000人に「A型の人はどんな性格か?」などと聞いた結果を性格判断の基準にしている(下の表)。血液型信仰は本に書かれた情報が基になっているので、大衆に聞けば同じ答えが返ってくるのは当然。まるで意味のない調査である。

番組が街の1000人にアンケートした結果
A型 几帳面で神経質、真面目、潔癖、細かいことを気にし過ぎ
B型 自己チュウで気分屋
AB型 二面性あり、“ワケわからない”
O型 大雑把、誰とでも話せる、まとめ役

 こんな偏見に基づく番組を作っておきながら、最後に「血液型による偏見や相性の決めつけはやめましょう。」というスーパーが出た。これはギャグだろう。

● 信じさせるトリック

 『発掘!あるある大事典』は懲りない番組で、7年前にも「検証!血液型性格のウソ・ホント」と題したひどいものを放送した前科がある。これについては心理学教授(長谷川芳典氏)がサイト『血液型性格判断資料集』で取り上げて詳しく批判している。同番組以外の血液型信仰についても論じているので、引用(黄字で示す)しながら簡単に紹介しよう。

 科学的根拠がないのになぜ多くの人が“当たっている”と思ってしまうのか。いくつかの統計学的なトリックがあるという。

1:ラベリング効果

 もともと人の性格を客観的に判断するのは難しい。最初から「A型はこういう性格だ」という先入観や固定観念を持つとその部分だけ目につき、性格の評価が変わってしまう。  つづき

2:少ないサンプルによるバラツキ

 統計学で扱うデータはサンプルが少ないほど偏りが出る。

総理大臣経験者、大相撲横綱、オリンピック金メダリスト、ノーベル賞受賞者・・・こういう人々の血液型の偏りは興味深い話題であろう。しかし、これらの該当者はもともと人数が少ない。人数の少なさを無視して比率の偏りばかりに目を向けさせる…

3:都合のいいデータだけピックアップ

 統計学は確率を扱う以上、関連のない事柄でもたくさん調べると1つや2つ有意の関連性が出てくるものだ。都合の悪いデータは無視し、たまたま血液型に合致したデータだけをつまみ食いするという手法である。

 番組では、コンビニでの小銭の支払い行動に血液型による違いがあるかどうかを調べた。ウォッチング開始2時間、どの血液型でも小銭の出し方に差は見られなかった。ところが意外な事実に気づいた。受け取ったお釣りを確認した人に差が出た。確認したのはA型136人、B型35人、O型32人、AB型19人だったという。これはつまみ食いの典型例である。

それではなぜ、小銭の出し方には差がなかったのか。また、店員と挨拶を交わす人の比率、買い物の時間や金額は、どうであったのか? みんな有意な差があったのだろうか? もし、コンビニでのいろいろな行動を調べ、最も偏りが顕著だったものだけをピックアップして紹介していたとしたら、それは全くフェアではない。

4:フリーサイズ効果

 誰にでも当てはまるので当たった気になる、あるいは絶対外れない仕組みのこと。占い師が使うテクニックである。

 氏は血液型性格判断のバイブル、能見正比古・著『血液型でわかる相性』の中から“相手に嫌われないためのポイント”を紹介する。

  • O型には自尊心を傷つけないようにする
  • AO型には心を傷つけないようにする
  • BO型には話にケチをつけないようにする
  • AB型には役割を無視、否定しないようにする

 どれも当たり前のことであり、外れようがない。大抵は自分の血液型のところしか読まないから気づかないのだろう。

 ボク自身は科学的根拠のないことは信じない主義。よって血液型性格判断はもちろん信じていない(根拠があれば信じる)。日本人の7〜8割が信じているという。それも根拠があって信じているわけではない。大衆の認識レベルはこの程度なのだろう。

 血液型でわかる性格として、こんな研究結果もある。この方が当たっている気がする。(中西大輔氏『血液型性格判断をやめよう』より)

・血液型性格判断を信じる人
気分のムラが大きく、人づきあいが好きで、人と一緒にいたがり、また権威者に従いやすい

 余談だが、ボクの性格はというと、これが極めて特徴的でまちがえようがない。子供の頃から現在に至るまで自他共に認める几帳面な性格。細かい部分にこだわり、人付き合いはおおむね悪く、相手を選ぶ。前出の表でいうとA型の性格がまさにピッタリ。

 ちなみにボクの血液型は子供の頃から現在に至るまでO型だ。文句ある?


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