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  ほぼ世捨て人/2005年1月

ボクの税が死んでいる

  〜 税金に見合った恩恵がないぞ 〜

ほぼ世捨て人もくじ


 ボクの収入はサラリーマンの半分ほどである。アルバイトに毛が生えたような身分だが、サラリーマンのような所得控除がなく、社会保険料控除も配偶者控除もゼロなので、所得税の支払い額はサラリーマンと大差がない。

 地方税も同様で、今年度支払った市民税・県民税は十数万円にも達する。

 それでも社会からそれなりの恩恵を受けていれば文句はないわけだが、国や自治体からこれに見合ったサービスはまったく受けていない。

 それどころかボクの税金で道路や橋を作り、ますます車が増えてまともに歩けないし、ムダな公共事業で自然が破壊され、大変迷惑をこうむっている。自分が払った税金で迷惑をこうむるくらいなら、税金をドブに捨てた方がマシというもの。税金を払うどころか迷惑料をもらいたいくらいである。

 この社会、ボクの税が死んでいる。ボクのように自立心が強くて健康な貧乏人は税金の恩恵を受けられないしくみになっている。

 ボクが支払った税金は、たとえばボクより裕福な公務員の給料に化ける。公務員とは公僕である。公僕の僕は召し使い、しもべの意。ボクのしもべがなんでボクより金持ちなのか。よく考えたらボクの方こそ公務員のしもべなのだ。

 ふくれ上がった国の借金は700兆円。この借金を返すためにまもなく大増税時代が来るという。所得税の定率減税(簡単に言えば税金2割引き制度)を廃止し、消費税率をいずれ10%にするという。バカ言ってんじゃないよと思うが、借金の恩恵を受けていないボクもせっせとこの借金を返していかなければならないのである。

 ボクはあと数年で“早期引退”し、所得はゼロになるから、所得税が増えようが関係ない。しかし、消費税のアップは痛い。残りの人生わずかな貯蓄で食いつなごうというときに消費税が5%上がれば、貯蓄が5%目減りするのと同じこと。これはかなわない。消費税が貧乏人を直撃すると言われるゆえんである。  つづき

 政府が増税の前にやるべきことは山ほどある。まずムダな事業をやめて予算を縮小せよ。公務員を半分に減らすべし。年間の税収76兆円のうち、公務員の給与は40兆円を占める。

 増税すれば負債が返せるという理屈に大衆はだまされることだろうが、これは早計だ。税収が増えれば予算が膨らみ、支出も増えるだけ。金遣いの荒い人にお金を渡せばムダ遣いが増えるのと同じこと。まず出るを制し、行政の体質を改めるのが先決である。

 まっとうな政治リーダーはまず借金を減らすことに取り組まねばならない。政策としては地味で大衆の支持を得にくいが、それをやるのが真のリーダーだ。

 たとえば東京都の石原慎太郎知事は真のリーダーといえるだろう。東京都は長年続いたムダ遣い都政で財政破たん寸前。そこに就任した石原都知事がまずやったのは自分の給与の10%、ボーナスの50%カット。さらに都職員の給与カット、職員採用数の縮小。一番やりにくい部分にまっ先に手をつけた。これはホンモノである。

 石原都知事のカジノ構想もボクは高く評価する。金持ちを遊ばせて税金を吸い上げる。だれも痛みを感じない妙案である。ところが、愚かな大衆やマスコミは東京をバクチ場にする気かと反発した。わかっちゃいないな。もちろん「金持ちから税金を取る方法です」などと言うはずもないので、そこは察してやらねばならない。

 国政の方はどうか。痛みを伴う「聖域なき構造改革」を掲げた小泉総理。借金返済に真正面から取り組んだ待望のリーダーである。ところが予想通り自民党のウゾウムゾウに寄ってたかって足を引っ張られた。マスコミにあおられた大衆が“痛み”に耐えかねて離脱し始めた。

 リーダーがよくても国民がバカだとやはりだめなのだ。そもそも国民が利口なら借金で火だるまになることもないはずだ。


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