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  ほぼ世捨て人/2005年5月

アクを抜いた食品

  〜 控えめが食品のトレンド 〜

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 現代の食品にはひとつの方向性がある気がする。アクを減らすという方向性だ。カロリー、塩分、脂肪分といったその食品独特の成分を抜くのがトレンド。

 肥満を気にする人が増えて、低カロリーがブーム。カロリーが低いからヘルシーだという根拠のない理屈が幅を利かせている。カロリーオフ、甘さ控えめ、砂糖不使用、ノンシュガー、無糖、微糖。

 カロリーが低いかどうかというつまらない基準で食べ物を選ぶ人が増えた。いま、加工食品でカロリー表示のないものはほとんどない。

 ダイエット生というビールがある。ダイエットコカコーラというコーラがある。

 コーラは甘いから飲むのであり、甘くないコーラに用はない。一度、普通のコーラのつもりでまちがえてダイエットコーラを買ってしまい、怒り心頭。

 こちとらダイエットなどしてないので、甘いものは思いっきり甘くあってほしい。カロリーが多すぎて太るというなら、食べる量を減らすか、生き方を見直すのがスジだ。

 日本ではウーロン茶が売れている。甘さゼロ、ただの冷えたにがいお茶が1本100円以上の値段で売られている。ボクならタダでも飲まないが。

 塩分の取りすぎはいけないというので、減塩ブーム。塩分控えめ、減塩をウリにする食品が増えた。減塩しょうゆ、減塩みそ。減塩じおというわけのわからないものもある。

 脂肪も目のかたきだ。脂肪控えめ、低脂肪。牛乳のうまさは乳脂肪分の多さで決まるのに、わざわざ乳脂肪を抜いた低脂肪乳。コクがなく、水を混ぜたようなうす味で、まずいのなんの。普通の牛乳より安価だが、さすがのボクでも買わない。

 おつぎはカフェイン抜き、デカフェ。  つづき

 カフェインの入らないコーヒーなんて。カフェインが入っているからコーヒーを飲むのに。眠れなくなるというなら、夜は他の飲み物を飲めばいいのだ。ちなみにボクは夕方4時以降、コーヒーは飲まないと決めている。

 アルコール分を下げた酒類が出回っている。ノンアルコールビール。アルコールを避けたいなら、ビールにこだわらずサイダーを飲んだらどうか。

 納豆の匂いはなんとかならないか、というので出たっ、匂いのない納豆。商品名を連発するのもなんだが、“におわなっとう”。物心つく前から納豆を食べていたボクは、もちろん買おうとは思わない。納豆の匂いがキライな人がなぜ納豆を食べる必要があるのか。納豆嫌いの家族への配慮?

 食品が変わってきた理由は生活習慣が変わったからだろう。日本人は塩分の取り過ぎだというが、高温多湿で長時間労働では大量の塩分が失われる。しょっぱい漬物には意味があった。

 塩分取りすぎで病気になるのは、戦後の産業構造の変化で肉体労働が減ったからだろう。冷房のきいた部屋でイスに座って働く人にはたしかに塩分は不要だ。

 低カロリーブームも同じこと。消費カロリーが減り、移動はクルマだからほとんど歩かない、その結果、カロリー取すぎで肥満や病気になる人が続出。

 栄養過多で死ぬ人はいるが、栄養失調で死ぬ人はいなくなった。“高カロリーで栄養があること”は食品選びの条件でなくなった。むしろそんな食品は見向きもされなくなった。

 昔の日本人は玄米を食べていたが、いまはわざわざ精米して栄養のある部分を削り落として食べている。それが食文化のトレンドなのだろう。


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