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  ほぼ世捨て人/2005年6月

動物ブーム乗せられ放題

  〜 話題の動物を見に行く人たち 〜

ほぼ世捨て人もくじ


 最近、テレビで話題なのが“二本足で立つレッサーパンダ”。

 ブームが過ぎると何のことかわからなくなるので、一応説明しておくと、ある動物園のレッサーパンダ(アライグマみたいなやつ)がすっくと立ち上がる姿がかわいいというので評判。これを見たさに来園者が殺到している。

 このくだらない話題をテレビで見るだけなら、失う時間は30秒ですむが、これをわざわざ一日つぶして動物園まで見に行く人がいるという。人生、他に興味のあることがないのだろうか。

 動物ブーム、以前は多摩川のアザラシのタマちゃん、人面魚、カルガモ親子…、古くは上野のパンダなどがあった。ボクも動物は大好きだが、こういうものをわざわざ見に行こうなんて気はない。

 レッサーパンダを動物園まで見に行くというのはどういう人なのか考えてみたい。

 おそらく純粋ピュアな一般大衆、性格も人生もボクとは180度正反対にちがいない。

 いくら政治や環境問題など小難しいことを口にしても、彼らの生活で最大の関心事はレッサーパンダなんだな。

 人生いかに生くべきかなんて考えたことがないにちがいない。主義、主張がなくて、ただ流されるだけ。少なくともボクが考えるような人生の悩みなんてなんにもないにちがいないのだ。

 レッサーパンダを子供にも見せてやりたいと家族連れで来園して、親子そろって馬鹿ヅラ下げて、「ほらほら、立ち上がったーっ」なんてやってるんだろうな。

 会社では、「オレ(アタシ)、あの立ち上がるレッサーパンダを見てきたんだ」と自慢してるのだろう。話題のタネを作って仲間内の注目を集めたいという心理。お仲間のレベルも知れるというものだ。  つづき

 彼らはみんなと同じことをしたという満足感を大切にする。もちろん会社の宴会やカラオケが大好き。休日のレジャーも人の多いところに行きたがる。毎年一回は帰省して、大渋滞とわかっていても高速に入って、連休の貴重な時間を無為に過ごすのである。

 平凡な小市民のくせに…いや、平凡だからこそ、とっても目立ちたがり屋。結婚式でスモーク焚いてゴンドラで降りてきたり、ハワイの教会で挙式したがるのもこのタイプ。

 高速道路の開通式に一番乗りをめざしたり、チケットを買うのに前夜からテントを張って行列の先頭を確保して自慢のタネにする。

 こういう人は話題やブームには簡単に乗せられるし、ブランド品にはめっぽう弱い。

 雑誌で紹介されたうまい店に行列を作るのが好き。昔、「たまごっち」を育てた前歴があるにちがいない。最近、マツケンサンバのCDを買っている。まちがいない。

 レッサーパンダでそこまでわかる? わかるんだな、これが(?)。

 こういう人は保険会社のライフプラン通りに生きている。その行動は統計学で十分予測できる。

 こういう人と世間話をするのは死ぬほど退屈である。できることなら口をききたくないし、ボクの半径20メートル以内に近づいてほしくない。

 ボクはこういう平凡な人が苦手なのだ。でも日本人の8割がこのタイプだからやんなっちゃう。

 レッサーパンダを見に行くことは犯罪ではないが、もう少し恥ずかしそうに人に知られないように行ってもらいたい。

 バカにしてるわけじゃないのだが(おもいっきりしてるか)、どうしても行間から軽蔑の念がにじみ出てしまって隠しきれないんだな。

 でも、ボクも彼らと同じ社会を生きなきゃならないのである。遁世したくなるのはこんなときだ。


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